
人気のトラベルライター土庄雄平✕ジャンボフェリーのコラボ連載!2024年7月1日よりのダイヤ改正を記念して、読者の皆様に、8時15分神戸発のジャンボフェリーを利用して旅する、観光情報をお届けします。
第十一回目は、小豆島坂手港新ターミナル「さかてらす」から始まる小豆島芸術旅のご紹介。ぜひご覧ください。

土庄雄平
トラベルライター/フォトグラファー。雑誌や新聞、旅行情報サイトで記事を執筆するほか、数々のフォトコンテストで入賞実績をもつ。得意ジャンルは自転車旅・山岳旅・島旅・秘湯旅・旅とキャリア・グルメの6つ。ペンネームの『土庄(とのしょう)』は、トラベルライターの活動の原点となった大好きな小豆島の地名から拝借している。
アートが風景に息づく島、小豆島へ。瀬戸内国際芸術祭2025をめぐる旅
ヒトクサヤドカリ(作家:尾身大輔)
オリーブの木々が茂り、青い海に囲まれた小豆島。瀬戸内国際芸術祭では、そんな豊かな自然や、古民家・学校といった島の風景がそのまま展示空間になります。島中をめぐれば、さまざまな場所に点在するアートが現れ、探す楽しさも魅力のひとつ。島の空気感そのものがアートの一部になっているような、そんな不思議な体験が待っていますよ。
瀬戸内国際芸術祭と、その魅力とは?
瀬戸内国際芸術祭は、瀬戸内海に浮かぶ島々と沿岸地域を舞台に、3年に一度開かれる現代アートのイベントです。2025年には第6回目を迎え、春・夏・秋の3つの季節に分けて、約100日間にわたって開催されます。
直島、豊島、小豆島など、数多くの島や港町が会場となり、国内外のアーティストが手がけたアート作品が、島の自然や文化と調和するように展示されます。
アートを楽しむだけでなく、穏やかな島の風景や、アーティストや島の人とのふれあいなど、島ならではの魅力もたっぷり味わえるのが瀬戸内国際芸術祭の醍醐味。
過疎化や高齢化が進む島々を、アートの力で島を活性化する取り組みとしても注目されていて、毎回世界中からたくさんの人が訪れます。アートをきっかけに、瀬戸内の島々の魅力を再発見できる、特別な時間が待っていますよ。
心に残る風景がここに。小豆島で見つけるアート旅
オリーブのリーゼント(作家:清水久和)
小豆島オリーブ公園
オリーブの島として親しまれている小豆島は、瀬戸内国際芸術祭の人気会場のひとつ。青い海と山々に囲まれた自然の中に、アート作品がそっと溶け込んでいて、島を歩くだけでもワクワクする体験が待っています。
港や古い家、学校など、どこか懐かしい場所が展示の舞台になっているのも魅力のひとつ。
作品を見て、地元の人とふれあって、おいしい島グルメを楽しんで――そんなのんびりした時間を過ごせるのが小豆島ならでは。アートをきっかけに、島の魅力を五感で感じられる特別な旅が楽しめますよ。
船旅から始まるアート体験。ジャンボフェリーで小豆島へ
小豆島へアクセスするなら、神戸港と小豆島・坂手港をつなぐジャンボフェリーを利用してみてはいかがでしょうか?神戸港は三宮駅から歩いて行ける距離で、京都や大阪からのアクセスもスムーズ。さらに、新幹線が停まる新神戸駅も近いので、遠方からの旅にもぴったりです。
そんなジャンボフェリーの中でも、注目したいのが朝8:15発の便。2025年の瀬戸内国際芸術祭に合わせて、今いちばんホットな航路です!
その理由のひとつが、テレビ番組「マツコの知らない世界」でも紹介された新船「あおい」。船内には随所に小豆島を感じられる工夫がたっぷり詰まっていて、プレミアム席を予約すれば、オーシャンビューの足湯やお風呂、4つのデッキでのんびり過ごすことも可能です。
「Journey of SHIP’S CAT 2025」
瀬戸内をめぐるシップス・キャットの旅(作家:ヤノベケンジ)
また、船には「SHIP’S CAT」も展示されています。これはヤノベケンジ氏による“船乗り猫”をモチーフにした彫刻作品で、旅の無事を祈る守り神のような存在。坂手港の新しいターミナル「さかてらす」の屋上にも同じ作品が展示されていて、到着したら2匹の猫と一緒に写真を撮るのもおすすめです。
スター・アンガー(作家:ヤノベケンジ)
さらに港には、2013年の第2回目の瀬戸内国際芸術祭に登場した、同じくヤノベケンジ氏の作品「スター・アンガー」も展示中。フェリーに乗って、港に着いた瞬間から、アートの旅がスタートします。
アート作品に感性を刺激される、2つの島の秘境エリアへ
瀬戸内国際芸術祭の会場の中でも、特にアートの展示数が多い小豆島。中でも私のイチオシは、まるで島の秘境エリアと言っても良い、「中山・肥土山(ひとやま)エリア」と「三都(みと)半島・神浦(こうのうら)エリア」。静かな里山や美しい漁村を舞台に、自然と溶け合うようなアート作品に出会えます。

本数は少なめですが、島内を走るオリーブバスもあるので安心。さらにおすすめなのが、小豆島全体で使えるシェアサイクル「HELLO CYCLING」。移動の自由度がぐっと広がります。
一番の魅力は、好きな場所で借りて、別の場所で返せること。小豆島には40か所以上のターミナルがあり、のんびりと島めぐりを楽しむのにもぴったり。電動アシスト付き自転車なので、体力があれば坂手港から両エリアへサイクリングでアクセスも可能です。
中山・肥土山エリア|山間集落に広がる、竹と音のインスタレーション
抱擁・小豆島(作家:ワン・ウェンチ―[王文志])
抱擁・小豆島(作家:ワン・ウェンチ―[王文志])
日本の棚田百選の一つ・中山千枚田のすぐそばには、瀬戸内国際芸術祭で毎回話題を集める、ワン・ウェンチ―[王文志]氏による、竹を使った巨大アートが登場します。
今回の新作「抱擁・小豆島」には、小豆島が世界に向けて手を広げ、世界中の人がこの島を訪れてくれたら…という願いが込められています。竹で作られたダイナミックな造形は、見た目のインパクトも抜群。中山千枚田の風景に自然と溶け込む竹のアートは、今では瀬戸内国際芸術祭の開催中、小豆島の“日常風景の一部”として親しまれています。
Reverberations 残響 ~ 岡八水車(作家:岡淳+音楽水車プロジェクト)
もうひとつ注目したいのが、「Reverberations 残響 ~ 岡八水車」。かつてこの地域では、水車の力を使った暮らしが営まれていました。作家・岡淳(おかまこと)氏の曽祖父も、水車で製粉や精米、素麺づくりをしていたそうです。
今ではその水車は残っていませんが、曽祖父が暮らしていた築120年の古民家を舞台として、当時の道具や農具を使って“音”で過去の記憶をよみがえらせるインスタレーション作品が展開されています。懐かしさとあたたかさを感じる、不思議で心地よい体験が味わえますよ。
三都半島・神浦エリア|穏やかな島時間。海沿いで出会うユニークな作品たち
自然の目「大地から」(作家・フリオ・ゴヤ)
自然の目「大地から」とシマ動物プロジェクト(作家:フリオ・ゴヤ)
小豆島の中でも、それほど知られていない三都半島・神浦エリア。実はここ、今ではアートが集まる小豆島の“文化の発信基地”となっていて、瀬戸内国際芸術祭の会期中には見応えある作品が次々と登場します。
特に注目したいのが、2019年の第4回芸術祭で登場したフリオ・ゴヤ氏の『自然の目「大地から」』。当初はツリーハウスのような形でしたが、今では進化し、まるで秘密基地のような空間に。テラスに立てば、神浦の美しい海の景色とともに、新作『シマ動物プロジェクト』も眺めることができ、独自の世界観が展開するアート同士の共演も楽しめます。
ダイダラウルトラボウ(作家:伊東敏光+広島市立大学芸術学部有志)
ナップヴィナス(作家:伊東敏光+広島市立大学芸術学部有志)
学生との協働で数々のアート作品を制作してきた伊東敏光氏。その中でも特に目を引くのが、神浦の町を見守るようにそびえる「ダイダラウルトラボウ」です。神浦の小径にあった石垣、役目を終えた船、瀬戸内海で集めた流木などを用いて制作され、圧巻の存在感を誇っています。
その対になる新作「ナップヴィナス」は、全長23メートルの女神像。解体された家屋の柱や漁具、採石場の道具など、かつてこの地で働いていた人々の記憶を宿す古材を素材に使い、どこか“母”のような包容力を感じさせる存在です。神浦の歴史と人々の営みに、静かに寄り添うような作品となっています。
個性豊かなアートが勢揃い。小豆島旅への誘い
再び ・・・(作家:キム・キョンミン[金景暋])
舟物語(作家:フリオ・ゴヤ)とダイダラウルトラボウ(作家:伊東敏光+広島市立大学芸術学部有志)
日常から少し離れて、アートと自然に包まれる時間――それが瀬戸内国際芸術祭の魅力と言えるでしょう。作品の鑑賞だけにとどまらず、島の人々との交流、土地の歴史や自然との触れ合いが、旅をより豊かに彩ってくれます。瀬戸内国際芸術祭の開催年である2025年、ぜひ小豆島を訪れ、自らの感性で島の物語を感じ取ってみてください。